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2013/07/20

”La rebelion de las masas”「大衆の反逆」






今回の参議院選挙。結果は予想出来たとは言え、
これ程までに酷い結果とは思いもし無かった。

スペインの哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセト(リンク)の著書
”La rebelion de las masas”「大衆の反逆」(リンク)。
1929年の本だが、それは現代の日本社会と同じ状況と言える。
オルテガの言う「高貴な生と、下等な生」の対比。
それは、理解し尽くしている概念ではあるが、
もう一度読み返して、自らを慰めたくなった。

若い頃の様に哲学書を読む気力など失っているが、
ミルヴァートンの大きなパイプにタバコ葉を一杯詰めて、
ジョセフ・ロジャースのタンパーでパイプを突いていると、
やり場の無い絶望感をクールダウンさせ、
失っていた気力を甦らせてくれるかも知れない。

2013/07/12

銀座はアイルランドの首都ダブリンが手本だった。



Overall Length: 145mm / Height: 57mm / Bowl Height: 57mm / Bowl Diameter: 45mm 
Chamber Bore: 21mm / Chamber Depth: 46mm / Weight: 70g / Filter: None



リターン・オブ・シャーロックホームズ・シリーズの
「ミルヴァートン」がロンドンから届いた。
写真で想像していた以上に軽く美しく粋なシェイプ、
そして高い品質に嬉しくなってしまった。

1987年に発表されたシャーロック ホームズ シリーズ。
その成功により追加された「シャーロック ホームズの帰還」。
このシリーズでミルヴァートンと名付けられたモデルである。
"Return of Sharlock Holmes Series"  Milverton
物語の中では悪名高い恐喝王ミルヴァートンだが、
なんと男っぽく優雅なシェイプなのだろう・・・
伝統に培われ磨かれた本物の造形とは、美とは何かを、
私に教えてくれる。


猟犬アイリッシュ・セターの魅力を知って以来、
私はアイルランドと言う国や土地柄に親しみを感じている。
ジョナサン・リチャード製のツイードの鳥打帽子。
ブッシュミルズやミドルトンのアイリッシュ・ウイスキー。
そして、ピーターソンのパイプなど、
私が愛着を感じるモノにアイルランド製品は多い。

一世を風靡したディアナ・ダービンが唄う
"The Last Rose of Summer"


アイルランドは遠い国だが、日本に近い国でもある。

小学唱歌として、子供の頃に唄った「庭の千草」の原曲は、
アイルランド民謡で、私の大好きな歌だ。
”The Last Rose of Summer"「夏の名残りのバラ」。
アイルランドの国民的詩人トーマス・ムーアの詩が好きだ。
日本の「庭の千草」は、バラでは無く白菊に変わるが、
この日本の歌詞も高潔で美しい。


初代「君が代」はアイルランド人の作曲だった。

日本の初代国歌「君が代」はアイルランド人の音楽家
ジョン・ウイリアム・フェントンによって作曲された。
1868年、明治維新の年に英国海兵 第10連隊第一大隊の
楽長として横浜に到着、翌1869年に横浜妙香寺で
薩摩藩士に軍楽伝習を開始した。
1870年10月、明治天皇が薩摩藩を始めとする4藩の
越中島操練を天覧する際、薩摩藩軍楽隊が初演奏したのが、
フェイトンが「君が代」の歌詞に曲を付けた礼式曲。
このフェイトンの「君が代」は、現在の「君が代」が
出来るまで国歌として世界に受入れられていた。

銀座の街並はアイルランドの首都ダブリンが手本だった。

1864〜1877年、アイルランドの建築技師
トーマス・ジェームズ・ウォーターズが来日し、
日本政府の委託で帝国造幣局・竹橋兵舎・銀座のレンガ街を
設計した。銀座の碁盤目状の街路やジョージアン様式の建築は、
アイルランドの首都ダブリンの建造物の影響である。

そして、
アイルランド人で日本文化を世界に紹介して下さった偉人
ラフカディオ・ハーン「小泉八雲」は言うまでも無い。


万葉時代から培った日本独自の文化を捨て去り、
西洋に追い付け追越せ、と世界の仲間入りを果たしたとは言え、
まだ、わずか120年程しか経っていない。
すべてに幼稚な日本社会の現状が納得出来る年月だ。


2013/07/05

朴訥な哀愁、が漂う様な風情を求めて。




"Peterson Pipe of the Year 2010" が4本揃った。
Limited Edition: No.208/1000とNo.700/1000。
こんな数字が微かに私を慰める


同じイヤーパイプも、それぞれ細部が異なっている。
まだ未使用のブライヤーは色が浅い。
ステムのさし込み口はそれぞれ太さが違う、
一本一本シャンクに合わせて調整しているからだ。
ハンドメードの暖かさが伝わって来る。

日本人には似合わない、と大嫌いだった
大きく重そうな曲がったパイプ。
今では私のお気に入りになっている。
自身の姿にパイプを合わせるのでは無く、
パイプに負けない威厳を身に付ければ良いのだ
と悟ったからだ。

多くの喫煙者が大きなパイプを使う理由が解った。
それは、ボール外径とチャンバー内径差が大きいほど
タバコが美味しく喫煙出来るってことだ。
完璧な機能と端正な造形美で私を虜にしてしまった
Peterson Pipe of the Year 2010。
決して高価では無いが、さすがイヤーパイプ。
火皿内径19ミリに対しボール外径は42ミリである。
約1センチの厚い火皿外壁が燃焼温度を一定に保ち、
タバコをとても美味しく感じさせる。
だから、同じイヤーパイプを私は4本も購入した。


さらにエボニー仕様を加えればシリーズ3種が揃う。
新品が残されているショップは解っているが、
今後予想される格差社会や恐慌に向う世情を考えると、
パイプばかりに、うつつを抜かしてもいられない。

しかし、これは贅沢でも、コレクションでも無い。
14本のクラブを使ってプレーするゴルフと同じ様に
ローテーションの為に必要だからだ。
間も無くロンドンから届くミルヴァートンを加えても、
まだフルセットには満た無い本数である。

自分に合ったパイプを探すのは楽しいが難しい。
あんなに欲しくて購入した
2本のダンヒル4110クロスビー・シェイプのパイプも
象牙の白点が私の見栄を少し満たしただけだった。
それは、
ロールス・ロイスやメルセデス・ベンツSクラスを、
運転手も付けずに、自ら運転している様な滑稽な姿。
私には似合わないと使わなくなった。

結局、私がパイプに求めているのは、
ロッキングチェアで、過ぎ去った冒険に満ちた日々を
回想する男が無雑作に扱う様なパイプ。
そんな、朴訥な哀愁に浸っていたいからだ。

2013/07/03

ルー・アーチャーのポンコツ・ポルシェとパイプ。





シャーロック・ホームズのあの仰々しいパイプや
いかにも英国的風情の鹿撃ち帽子ディアストーカーなど。
けっして私の趣味では無いのだが、
結局、ミルヴァートンをオーダーしてしまった。
そして今、推理小説に於ける名探偵について考えながら、
それが届くのを楽しみに待っている。

名探偵の必須条件、それはキャラクターにあるようだ。
多分、作者自身が憧れるダンディズムなのだろう
元祖は、エドガー・アラン・ポーの C. オーギュスト・デュパン。
そして、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ。
アガサ・クリスティのエルキュール・ポアロ。
それぞれの探偵はダンディズムの極致として描かれている。

しかし、日本では江戸川乱歩の明智小五郎。
作者のペンネーム「江戸川乱歩:エドガワ・ランポ」は、
エドガー・アラン・ポーからの当て字だと言うから、
まさに、日本のイミテーション文化を象徴する。
明智小五郎は奇人の類いとして登場するが、
ダンディズムを理解し得ない作者が描く探偵でしか無い。
しかし、このバーバリズムも魅力的とも言える。
案外、TVで人気を博した刑事コロンボの
ヨレヨレのレインコート姿や安葉巻の匂いは、
明智小五郎がヒントになっているのかも知れない。



そして、私が好きなハードボイルド小説の私立探偵
レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ。
最も好きなロス・マクドナルドのルー・アーチャー。
特に、原作「動く標的 ”The Moving Target"」を映画化した
ポール・ニューマン主演の映画 ”HARPER" (1966年)。
映画での名はルー・ハーパーだったが、今も私は憧れている。

まだ、航空母艦の様に大きく豪華なアメリカ車全盛の時代。
彼が乗るのは小さなポンコツのポルシェ・スピードスターだった。
クルマごときで虚栄心を満たし自己顕示する低俗な風潮を
無視した存在としてルー・アーチャーは描かれる。

多分、私立探偵ルー・アーチャーが持つダンディズムは、
パイプ喫煙などと言う嗜好は受入れないだろう。
もし、ロス・マクドナルドが、
ルー・アーチャー引退後の姿を描いた作品を発表したとすれば、
ミルヴァートンをくわえてポンコツ・ポルシェを走らせる、
と思いたいのだが・・・