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2013/03/01

パイプ喫煙は古いスポーツカーの操縦技術と同じだ。

















パイプ喫煙を始めて約1ヶ月が経った。
興味深く奥が深い世界だからすっかり虜にされてしまった。
一日中パイプの事しか考えないで喫煙し続けた。
いろいろと試行錯誤し研究もしたから、
通常の経験なら1年分に相当するかも知れない。
そして、感じたのはクラシックスポーツカー愛好と
共通点が多い事である。

手動チョークを引き、点火時期をレバーで遅らせて、
ガソリンをキャブレーターに数滴たらし
クランクレバーを回してエンジンを始動させる。
チョークを戻し回転を少し高くスロットルペダルで調整しながら
冷却水やオイルが暖まりエンジン回転が安定するのを待つ。
その面倒な手順はパイプ喫煙と同じである。

タバコ葉の種類・刻みの形状や湿度の状態を考慮しながら、
3層に分けて下部は緩く中間から上部へと強く、
タンパーでの押さえを計算しながらタバコ葉をボールに詰める。
点火し燃焼により盛上がる葉をダンパーで押さえて、
再度全体に火が回る様に点火して喫煙出来る状態になる。

葉巻も手に持ってクルクル回しながら金環食の輪の様に
まず周囲に細い火の輪を作り中心部を炭化させ火を付けるが、
この点火の手順で喫煙の味わいは、ほぼ決定される。

喫煙中は、レーシングテクニックでコーナーを抜ける様に、
コーナーをイメージしながら進入直前のブレーキング、
Wクラッチを踏んで回転を合わせシフトダウン。
クリッピングポイントをフルスロットルで立上がって行く様に、
パイプ内のタバコ葉の燃焼状態を最良に保つ為、
吸入排出空気量の強弱と速さの微妙なコントロールが要求され
タンパーで繊細に火の管理をし続けなければならない。

燃焼や煙の流れに対する科学的な想像力や好奇心、
そして、器用さや工夫を重ねる執着心が強い性格で無ければ、
芳醇な味わいを得る事は不可能である。

また、クラシックカーと同じ様に1970年以前の
価値あるビンテージ・パイプはコレクターズアイテムとして
高額で取引される市場が存在する事も知り驚いた。


パイプで喫煙する為だけに要するこの煩わしさ。
人間の能力以上に完璧に全てがオートマチカリーに作動し、
メインテナンスフリーであることが当然の現代。
趣味性の無い冷蔵庫の様になった現代のクルマには、
車格や造形に自らの虚栄心を満たす低俗な喜びしか無い。
喫煙も健康に害がある以外に何の取り得も無い。

だから、私は若い方々のクルマ離れ、タバコ離れは喜ばしい。
もし今、私も若く活動的に行動出来るなら、
一昔前の古いスポーツカーなんて見向きもしないだろう。
最新の高性能フェラーリで若さを謳歌する。
酒や葉巻、そしてパイプなんて嗜好には興味を示さない。
ヤングエグゼクティブを気取って禁煙する。
若者には味覚や芳香よりも大いなる野望が相応しいから。



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