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2013/07/03

ルー・アーチャーのポンコツ・ポルシェとパイプ。





シャーロック・ホームズのあの仰々しいパイプや
いかにも英国的風情の鹿撃ち帽子ディアストーカーなど。
けっして私の趣味では無いのだが、
結局、ミルヴァートンをオーダーしてしまった。
そして今、推理小説に於ける名探偵について考えながら、
それが届くのを楽しみに待っている。

名探偵の必須条件、それはキャラクターにあるようだ。
多分、作者自身が憧れるダンディズムなのだろう
元祖は、エドガー・アラン・ポーの C. オーギュスト・デュパン。
そして、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ。
アガサ・クリスティのエルキュール・ポアロ。
それぞれの探偵はダンディズムの極致として描かれている。

しかし、日本では江戸川乱歩の明智小五郎。
作者のペンネーム「江戸川乱歩:エドガワ・ランポ」は、
エドガー・アラン・ポーからの当て字だと言うから、
まさに、日本のイミテーション文化を象徴する。
明智小五郎は奇人の類いとして登場するが、
ダンディズムを理解し得ない作者が描く探偵でしか無い。
しかし、このバーバリズムも魅力的とも言える。
案外、TVで人気を博した刑事コロンボの
ヨレヨレのレインコート姿や安葉巻の匂いは、
明智小五郎がヒントになっているのかも知れない。



そして、私が好きなハードボイルド小説の私立探偵
レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ。
最も好きなロス・マクドナルドのルー・アーチャー。
特に、原作「動く標的 ”The Moving Target"」を映画化した
ポール・ニューマン主演の映画 ”HARPER" (1966年)。
映画での名はルー・ハーパーだったが、今も私は憧れている。

まだ、航空母艦の様に大きく豪華なアメリカ車全盛の時代。
彼が乗るのは小さなポンコツのポルシェ・スピードスターだった。
クルマごときで虚栄心を満たし自己顕示する低俗な風潮を
無視した存在としてルー・アーチャーは描かれる。

多分、私立探偵ルー・アーチャーが持つダンディズムは、
パイプ喫煙などと言う嗜好は受入れないだろう。
もし、ロス・マクドナルドが、
ルー・アーチャー引退後の姿を描いた作品を発表したとすれば、
ミルヴァートンをくわえてポンコツ・ポルシェを走らせる、
と思いたいのだが・・・



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